赤ちゃんの頃、私たちは感情と欲求の生き物でした。
お腹がすいたと泣き、眠いと泣き、抱き心地が悪いと暴れ、感情と欲求は、私たちと外の世界をつなぐ大切なものでした。
しかし、成長するにつれ、人は言葉を覚え、トイレットトレーニングを通じて自分の身体の働きをコントロールすることを学び、他者の目を意識するようになり、しだいに感情や欲求を抑えるようになります。
自分の内と外をつなぐのは、感情と欲求だけでよかったはずが、外の世界ではだんだんと、言葉や理性が重宝されるようになっていきます。
内側の世界だけになっても、外側の世界だけになってもいけないのです。
感情と欲求は、身体の感覚と密接なつながりをもっています。
自分がここにいると、確かに感じるためには、感情や欲求とのつながりを絶ってはいけないのです。
感情的な人だ、とか、欲求の赴くままに、という表現に、私たちはよい印象を持ちません。
本来、悪いものではないのにもかかわらず、です。
ここには、感情や欲求に対する無知があるように思います。
このblogでは少しずつ、感情や欲求の持つ意味や働きについても、書いていきたいと思います。
感情と欲求は、本来自分の内側でしっかりと感じられる必要があります。
感じることと表すことは違うのです。
感情や欲求をしっかりと感じられる人は、わがままで無分別にはなりません。
その人の中には、感情や欲求の居場所がちゃんとあるからです。
そして、感情を感じられる場所が、自分の中に整うと、心が柔らかくなります。心が自由になります。
しなやかに生きていけるようになるのです。
役所広司さんと樹木希林さんの映画「わが母の記」は、このプロセスがとてもよく描かれています。
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母親から捨てられたと思っていた主人公が、あることをきっかけに、母も自分を想っていてくれたことを知り(この場面は、とても短い場面ですが、とても感動的です)、本当は母から愛されたかったという抑えてきた欲求に触れ、号泣します。
このシーンの後、主人公は本当にはっきりと変わっていきます。頑なさがやわらぎ、優しくなり、目にも力が宿るのです。
ひとが変わるということ。
そこで感情が果たした役割。
ヒュー・ジャックマンやラッセル・クロウが出ていた「レ・ミゼラブル」も、感情と、ひとが変わる、ということの密接な関係を描いている映画のひとつです。
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次回は、こんなふうに、映画を考察するきっかけになった本をご紹介しようと思います。