「クライエントが涙を流し始めると、慰めたくなってしまう」
という言葉を聞いて、そうなのか、と思うとともに、自分が見ているものは少し違うんだな、と思ったことがあったので、記事にまとめておきたくなりました。
感情や体験に注目するアプローチを取るカウンセラーは(というか、私は)、クライエントの中の「感情」や「体験」を擬人化して、その存在を尊重し、その声に耳を傾けています。
悲しんでいるクライエントは、確かに傍からみるとつらそうで、「涙を止めてあげたい」という気持ちになる人も多いかもしれません。
しかし、「悲しみ」からしたら、クライエントが悲しんでいる状態は、「やっと出てこれた」「やっと見てもらえた」という気持ちなのです。
やっと、自分の存在を認めてもらえた。
やっと、自分の声が届いた。
だから、その涙は止めないで、しっかりと流してもらいたい。
怒りであっても同じです。
「怒りを感じるなんて、クライエントにとってはきついことなんじゃないか」
そんなカウンセラーの言葉を聞くこともあります。
ですが、やはり怒りも、「やっと見てもらえた」「やっと息ができた」。そんな感じで、クライエントの中から出てくるのです。
やっと出て来た感情を、クライエントがしっかり感じ切れるように支えるのが、カウンセラーの役割です。
そのプロセスを経ると、クライエントも、自分の中の怒りや悲しみを無視することなく、それに目を向け、「悲しいよね」「腹が立つよね」と声をかけてあげることができるようになります。
私は悲しい。
私は怒っている。
そんなふうに言うと、どうしても感情を抑えてしまいそうになる。
そんなときは、
「私の中の悲しみが何か言っている」
「私の中の怒りが何か言おうとしている」
と思ってみるのもいいかもしれません。
私たちはみんな、自分という集合住宅の中でたくさんの感情たちと同居しているようなものです。
お互いが心地よくいられる環境を、話し合いながら作っていく。
カウンセリングでは、そのお手伝いをしています。