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心理職養成の大学院教育あれこれ:SVシステムについて

自分が若手ではなく、もはや中堅と呼ばれる立場であることを、学会で顔なじみの先生方からつっこまれ、「中堅」などというぶかぶかの上着に袖を通してみたのは昨年のこと。心理臨床の世界では、いわゆる「若手」や「初学者」は臨床経験5年目くらいの臨床家を指すのが一般的である。

私は九州で臨床家としての「若手」の時期を過ごし、「中堅」となってからは都内で臨床家の育成に携わる仕事をしているが、現在かかわっている学生の教育システムと、自分が経験したそれとの違いをたびたび感じる。

場所も時代の違うので、当然といえば当然だが、いろいろと興味深い違いもあるので、今回はそのことについて書いてみたい。

①SVorの選び方と料金

都内の大学では、ゼミなどを担当する教員がSVor役も担っているところが多い。Svorとゼミの教員が完全に一致しているところもあるし、ゼミの指導教員以外の教員がSvorとなるというシステムのところもある。この場合、院生は無料でSVを受けることができるが、必ずしも希望通りの教員から指導を受けられるわけではない。中には、非常勤SVorを雇い、多重関係に陥ることを防ぐ大学もある。この場合もSVは無料で受けられるが、非常勤講師は曜日ごとに割り振られているため、実習などで特定の曜日に大学に来られない院生は、そのSVorの指導を受ける機会が得られない。

私がトレーニングを受けた大学院では、基本的にSVは外部の専門家に委託し、院生が自分でお金を払ってSVを受けに行くというシステムだった。大学の相談センターに「スーパーヴァイザー名簿」が置いてあり、院生はケースを担当したら、その名簿の中から自分で SVorになってもらいたい先生を選び、自分でSVの依頼をするのだ。

その名簿は(おそらく)修了生や非常勤講師の先生方で構成され、私の場合は、集中講義にも来てくださっていたフォーカシング指向の先生にお願いをした。こちらは顔を知っているとはいえ、面識はほぼゼロと言ってもいい状態でSVの依頼メールを出すというのは、ハードルが高かったけれど、目上の人へ出すメールの書き方を学ぶ良い機会になったし、大学院修了後に自分でSVをお願いする免疫も、このときつけることができたように思う。

もちろん、依頼した先生がご多忙で断られることもあった。しかし、その場合もご丁寧にお手紙をくださった先生がいらした。そうした先輩方の態度に触れたことも、私がこの職業に失望せずに済んでいるひとつの理由になっている。

料金はピンキリで、精神分析のSVを受けていた友人は私の3倍くらいの額をSVに投資していた。金銭的な理由でSVorからの指導を断念した人もきっといたことだろう。

都内の学生の経済状況を見ていると、どちらがいいとは一概に言えないけれど、大学教員の多忙さを考えても、SVを外部委託にするという選択肢はもっと各大学院で検討されても良いことのような気がする。

臨床心理士、あるいは公認心理師を目指す方たちには、まずは身の丈にあったSVを受けたらいいと言いたい。有名な先生のSVがあなたを優秀な心理職にしてくれるわけではないし、学びへの出費で家計が火の車になっては元も子もないわけで、経済的な安全感を持ちながら学ぶことが大切だとおもう。

 

余談:文明の機器を活用したスーパーヴィジョン

ここからは余談だが、上京する直前、私は東京在住の先生からSkypeでSVを受けていた。料金は銀行振込である。SVもカウンセリングも、対面にこだわる時代ではなくなった。この先生のSVからはとても多くを学んだし、SVは対面でなければ質が落ちるという性質のものではないというのが、経験則からくる感想である。物理的なハンデを超えて、若手が経験ある臨床家から学べるシステムの活用は必須であると思う。