男性は、恥を怒りで覆い隠す。
女性は、怒りを悲しみで覆い隠す。
二次感情について説明するとき、こんな例を出すことがあります。
個人の感情の感じ方や表し方には、社会や家庭の文化が個人に求める性役割が影響を及ぼしているのです。
これを聞いた女性からの反応として多いのは、「男性の方がさまざまな感情を覆い隠さなくてはいけなくて大変そうだ」という意見です。
確かに、そうしたイメージは私にもありましたが、自分が生きてきた性別ではないためか、男性の抱える弱さに思いを馳せるのは難しいことでした。
しかし、こちらの本では、男性の「弱さ」が女性にもとてもわかりやすいものとして描き出されており、女性にも男性にもおすすめしたいと思いました。
「男の弱さとは、自らの弱さを認められない、というややこしい弱さなのではないか」(本文より)
第二次性徴に伴う身体の変化に対して覚える戸惑い。
自分の性別に対する嫌悪感。
「助けてほしい」と言えない弱さ。
求められる「男らしさ」が苦しい。
誰からも愛されない自分に対するとめどない不安と恥。
これらは女性とも共通するものです。
ただ、#MeToo運動にも見られるように、女性はこれらの苦しみを他の女性たちと分かち合い、互いに励ましと癒しを与え合い、声を上げます。
しかし、男性は、自らの弱さを自分の内側に抱え込むことで、どんどん孤独に陥ってしまいます。
「自分の弱さをまっすぐに見つめること、そんなとても単純で素朴なことがどうして僕らにはできないのだろうか」(本文より)
航空機のパイロットの業務前の飲酒の問題や、公務員による覚醒剤使用がニュースになる中、その背景には、男性が抱え込んで、どこにもやり場のない孤独があるのではないかと考えずにいられません。
明らかになった問題にではなく、その背景にある要因にこそ、社会は目を凝らさなくてはいけないと思います。