医原病という言葉があります。
厳密には、「医療行為が原因で生じる疾患」のことを指しますが、カウンセリングのなかで、クライエントのつらい過去の出来事や、愛されていなかった記憶にばかり焦点を当てることは、この「医原病」を作り出してしまうことになりかねません。
時には、クライエントのまなざし、あるいはカウンセラー自身のまなざしを、「痛んでいない部分」へ向けることが、とても大切だと思います。
両親には愛されなかったけれど、祖父母からはたくさんの愛情を注いでもらった。
思うように身体は動かなくても、日々呼吸し、楽しいときには笑ったり、笑顔になれることもある。
ひどい裏切りに遭い、心はボロボロだけれど、信頼できる人たちとのつながりもある。
つらく悲しい出来事があったけれど、それを話せる相手がいて、また、自分自身にもそれを話す力がある。
問題に立ち向かっていくときほど、自分がどんな力を持っているか、自分にはどんな味方がいるかを確認する必要があります。
カウンセラーが、そうした力や味方を見つけるためのもう一つの目になることができたらと思います。