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emotion laboratory

感情は人生の羅針盤

毒にも薬にもなる?:議論を呼ぶうつ病治療の試み

マジックマッシュルームに含まれる成分、シロシビン(psilocybin)を、うつ病の治療に活用する。

そんな画期的ではありますが、議論を呼びそうな研究がロンドンで行われました。

time.com

アメリカの抗うつ薬と言えば、プロザックが有名ですが、プロザックがよく効くのはうつ症状に苦しむ人の5分の1と言われています。そんな中、つらいうつ症状を緩和させるために、ドラッグに手を出してしまう人も少なくないようです。

うつ病の患者さんでは、内省(self-reflection)にかかわる脳の部位が過剰に活性化することが知られています。この過剰な活性化が、うつ病に特徴的な症状である反芻やネガティブ思考に影響しているのではないかと、専門家は指摘しています。

マジックマッシュルームのシロシビンという成分は、これと反対の作用を持つため、うつ病にどのような効果を持つかを検証する研究が行われたようです。

研究の対象者は、すでに2つの治療法を試して効果を感じられなかった12名の人たちでした。調査は次のような形で行われました。

1. シロシビンを2回内服した後、MRIで脳をスキャンする。

2. 調査開始時から3ヶ月間、定期的にうつ症状に関する質問に回答する。

そして、結果は以下の通りです。

1. 1週間後、12名全員がうつ症状が改善したと報告し、3分の2の人はなんと、うつ症状から完全に脱しました。

2. 3ヶ月後の改善率は58%でした。5名は寛解状態を示した一方、5名は再発したのです。

プロザックに反応のよい人たちが、うつ病の患者さんの5分の1であることを考えたら、とても高い改善率と言えるかもしれません。しかし、この研究には、統制群がないこと、対象が12名と少ないことなどの課題があることも指摘されています。1名を除いて全員が、ドラッグの使用によるうつ症状の緩和を体験していたので、そうした期待感がプラセボ効果を生み、影響した可能性も否定できません。

オックスフォード大学のPhilip Cowen博士は、今回の結果を支持しながらも、更なる研究の積み重ねの必要性を指摘しています。研究者らは、シロシビンが既存の治療法ではなし得ない何事かをなし得るのか、あるいは、シロシビンに注目し、その効果を追求するだけの正当性を持つに十分な特異な作用を持つのか、といったことを記録する必要があるでしょう。

この研究を行ったインペリアル・カレッジ・ロンドンのRobin Carhart-Harris氏は、シロシビンには特異な効果が期待できると考えています。彼は、シロシビンによって心のうちに秘められた過去の記憶や、かつて経験した人間関係をはじめとするその他の課題(issues)が、ベールを脱ぐことになり、それは心理療法と同等の働きを持ち、効果はもっと速く現れるだろうと述べています。

しかし、これには大きな副作用も伴うかもしれません。私たちは、過去のつらい出来事に蓋をしたり、忘れたりしておけることによって、現実に適応しているという側面もあるからです。

実際、この実験はセラピストがそばにいる状況で行われ、幻覚作用がピークに達した際には、被験者たちをサポートし、後でその体験への理解を促進する作業を行えるようにセッティングされていたということです。

鎮痛剤のモルヒネもアヘンから抽出され、より中毒性の強いヘロインはモルヒネから作られます。

うつ病に対するさまざまな治療法が検討されるのは、とても心強いことですが、どんな治療法も使い次第で、毒にも薬にもなりうる(もちろん、心理療法も例外ではありません)のだということは、心に留めておく必要があると言えそうです。