emotion laboratory

感情は人生の羅針盤

依存症と気質の関係について

三つ子の魂百までという諺が、日本語にもありますが、ニュージーランドで行われたある研究では、3歳のときの様子を観察することで、その子が30代になったときに、薬物やギャンブルへの依存症に陥る可能性を予測できるという結果が示されました。

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この研究は、依存症のルーツを探ることを目的に、およそ1000名の被験者の誕生から32歳までの心理的・経済的・知的なライフコースを追跡する形で行われました。

このような長期的な研究を行うことにより、ギャンブルや薬物といった要素が衝動的な行動やうつ病を引き起こすのか、もともと落ち込みやすく衝動的な性質を持った人が依存に陥りやすいのかといった、“ニワトリが先か卵が先か”という現象に対する示唆を得ることができます。

研究者たちは、20代や30代で依存症になった人たちには、3歳のころから、感情が移ろいやすく、衝動的でわがままなところがあり、ネガティブ感情が比較的高いなど自己コントロールの能力に欠ける気質がみられたことから、従来よりも低年齢の被験者を対象とした依存症の予測因子に関する研究が必要であると主張しています。

ちなみに、なぜ上記のような気質とギャンブルや薬物への依存とが関連するのかについては、まだはっきりとしたことはわかっていません。

しかし、こうした気質を持つ人たちは、そうでない人たちに比べて、ネガティブな感情に苦しめられやすいとされています。ギャンブルは、脳の報酬系に作用し、一時的に快感情を高める働きがあるため、つらい感情に苦しむ人たちにとって、ギャンブルは一種の“ストレス・コーピング”となってしまうのです。

京都大学こころの未来研究センターのPDFへのリンクです。http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/kokoronomirai/pdf/vol2/Kokoro_no_mirai_2_05.pdf )

ギャンブルや薬物はネガティブな感情からの一時的な逃げ道になる一方で、衝動のコントロールを低下させる要因にもなります。この2つが組み合わされると、苦しい感情から逃避するためにギャンブルをし、衝動性のコントロールが低下するために、多額のお金をつぎ込む、といった悪循環が発生してしまうことになるでしょう。

このことから、研究者たちは、ギャンブルや薬物、飲酒などへの依存の治療のためには、“行動の修正”だけでは不十分であると指摘しています。

ある心理学者も、“行動は感情に導かれる”と主張しています。行動を生み出すもととなる感情や、感情にかかわる気質へもアプローチすることが、依存症に限らず、多くの精神疾患や問題行動の治療や修正において、大切な役割を果たすと言えるでしょう。

また、自己コントロールの能力は、IQのように一生を通じて一定である性質に比べて、変化しやすいもの、つまり後天的に高めることができるものであることも知られています。その証拠に、3歳の頃に自己コントロール能力の乏しさが目立っていた子どもも、成長するにつれて、そうした状態から脱する(outgrow)こともわかっています。

衝動的で、傍若無人で、わがまま、というのは、どの子どもにもある程度みられるものですし、3歳の子どもに過剰な自己コントロールを求めることは、かえって悪影響にもなりかねません。

子どもの気になる様子をすぐに異常や欠陥とみなすのではなく、かといって無視したり放置したりするのでもなく、ある程度の楽観を持って、注意深く見守り続けることが大切なのでしょう。