Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

表情に普遍性はあるのか:P.Ekmanへの疑問符

Paul Ekmanという心理学者は、表情で表される感情は、文化や国籍を越えて共通していることを明らかにしましたが、近年では、この説に異論を唱える研究もみられています。感情の表出は、文化的な影響を大きく受けるというのです。

time.com

この記事では、ナミビアのヒンバ族に、6種類の感情を表現した表情の写真をみせ、分類してもらうことを試みました。

研究者は、それらの写真は示されている感情の数に沿って、6に近い数に分類されるだろうと予測していましたが、なんとヒンバ族の人々は6よりもはるかに多い種類に写真を分類し、1つの表情にいくつもの感情をみていることもあったそうです。

これは、音声による感情表現においても同様で、ある人は喜びの声と認識したものが、他の人には、よりネガティブな感情を表すものとして認識されたそうです。

ヒンバ族 - Wikipedia

西洋人が一般に幸せを表現していると認識する表情も、ヒンバ族にとっては、幸せの表現でもあり、不思議がる表現でもあると認識されるようでした。

Paul Ekmanもフィールド研究を通して、表情の普遍性を明らかにしたはずですが、なぜこのような異なる結果が示されたのでしょう。

Ekmanは、被験者に感情を同定させる際に、今回の実験のような自由度の高い形ではなく、6つの表情に感情を表すどの言葉があてはまるかを選ばせたり、特定の表情を表すような状況のシナリオを選ばせるといった形をとっていました。

これによって、本来は存在しない“感情の普遍性”がほのめかされたのではないか、とヒンバ族のフィールド研究を行った研究者たちは指摘しています。

しかし、馬も人のポジティブな感情とネガティブな感情を見分けることが知られているため、表情を読み取ったり表情で感情を伝えるときには、種族や国籍を越えた何らかの共通項があると考えられます。 

emotion-lab.hatenablog.com

例えば、エスキモーには“雪”を示す言葉がたくさんあるように、ヒンバ族には、西洋人が1つの感情しか読み取らない表情の中の複数のサインに注目しているという可能性もあるかもしれません。

更なる研究が待たれるところです。