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〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

嘘は知性と想像力で磨かれる:嘘と認知的負荷(cognitive load)

先日、ご紹介した嘘に関する記事では、嘘をつくことにより、罪悪感などの感情的負荷がかかることが指摘されていました。

emotion-lab.hatenablog.com

一方、嘘をつくときには、辻褄を合わせる必要があったり、ついた嘘を自分で覚えていなければいけないといった“認知的な負荷”も生じます。

認知的負荷が生じていることを示すノンバーバル・サインとしては、瞬きが減ることが知られています。しどろもどろになると、瞬きが増え、目が泳いだりしますが、ここまで来るともう、嘘をつき通せなくなくなっている状態です。しかし、まだほころびの少ない段階では、辻褄を合わせることを考えるので、瞬きが減ったり、相手に嘘を信じ込ませようとして、あえて目をそらさないという振る舞いも見られます。

つまり、“嘘をついているときほど、自信満々に見える”こともあるのです。

time.com

このため、嘘を見破るためには、“相手が何かを考えているというサイン”、つまり、認知的負荷がかかっていることを示すサインに注目するのも有効なようです。

例えば、以下のようなものが挙げられます。

・身振り・手振りが減る

・同じフレーズを繰り返す

・答えが短く、曖昧なものになる

・間や沈黙が増える

・他人事のような、あるいは客観的な語り口になる(「僕が」「私の」といった主語の使用が減る、第3者のことも名前で呼ばず「彼」「彼女」といった呼び方をする)

・歯切れの悪い話になる

・話題を変える

今回ピックアップした記事では、緊張や不安といった感情を示すサインに注目するのではなく、相手がまるで政治家や車のディーラーになってしまったかのように、歯切れが悪く、他人行儀な話し方をするかどうかに注目することを勧めています。

ティム・ロスが主演していた海外ドラマ『 lie to me 』では、ほんの数秒のうちに現れて消える、micro expression(微表情)というかすかな表情の変化や、身振り手振りから、相手の嘘を鮮やかに読み解く場面がとても印象的でしたが、人が発するサインは、確かに感情と認知(思考)、そして身体感覚などが複雑に絡み合ったものです。

個人的には、不安や緊張のサインにも注目すべきであると思いますが、感情のサインを上手に隠せてしまうような、嘘を得意とする相手には、認知的負荷を示すサインを探してみるのがよいかもしれません。

さらに記事では、専門家が、嘘をついている相手を陥落させる方法についても書かれています。それは、“認知的負荷が増すような質問をする”ことです。

具体的には、相手が曖昧にしている点の、詳しく正確な説明を求めるというやり方です。これは刑事や検察官でなくても、恋人の浮気を疑う女性や、子どものズル休みを疑う親もやることでしょう。いわゆる“事情聴取(cognitive interview)”です。

化粧で隠した皺やシミも、明るい光の下では目立ってしまうように、嘘も曖昧さのベールで隠せなくなるとほころびが目立ち始めます。

裏を返せば、上手な嘘をつくためには、整合性のとれたストーリーを構成する力が必要であり、その意味では、嘘は知性と想像力の産物とも言えるかもしれません。

嘘には、利己的なものばかりでなく、誰かを守るための嘘や優しい嘘もあります。

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暴かれるべき嘘と、暴くべきではない嘘。

嘘を悪だと糾弾するのは簡単です。

嘘が生まれた事情や背景に思いをはせることも、忘れてはいけないような気がします。