emotion laboratory

感情は人生の羅針盤

感情の理論から読み解く引き寄せの法則:サラとソロモン

今回取り上げるのは、こちらの本です。

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引き寄せの法則は、ポジティブ心理学とも共通することが多いですが、中には、悲しみや怒りといった感情は感じてはいけないといった感情に関する誤解を、読者や聴き手に与えるものもあり、諸手を上げて賛成とは言いにくい印象を持っています。

しかし、こちらの本に書かれていた引き寄せの法則のごく基本的な部分は、感情の機能と役割に焦点を当てた心理療法の中で行われることと、驚く程よく似ていましたので、確かにここには、“人が変わる”ための鍵が隠れているような気がして、ご紹介したいと思いました。

また、引き寄せの法則に関する本は、一般の人向けに書かれているため、難解な心理学の専門書よりも、多くの人に感情の大切さをわかりやすく伝えられるというメリットもあると思います。

この本の中では、“喜びの流れ”(英語の原文がわかりませんが、もし、flowと書かれているなら、心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱したflowの概念とも近いかもしれません)につながるための4つのステップが紹介されています。

これは、感情の役割と機能を重視する立場を取る心理療法家たちが、クライエントとのセッションの中で歩んでいくプロセスととてもよく似ています。

1つ目のステップは、“自分が欲しくないものは何かを知ること”です。

これは、感情の役割と機能を大切にする心理療法では、クライエントにとっての過去のつらい体験に当たるでしょう。

自分にとって、ある特定の記憶が“つらいことだ”と認めることすら、難しい場合があります。多くのクライエントは「つらい」と言うことができず、それを「甘えだ」とか「自分が弱いからだ」と思って認めようとしなかったり、「自分がこんな思いをしているのは親のせいだ」とか「自分をこんな境遇に追いやった世の中が悪い」と自分の心の中の傷つきに目を向けるのを避けて、他者へ恨みつらみに向けかえていたり、言葉にし得ないつらさは、無意識へと押し込まれて、身体の症状や行動面の問題として現れたりします。

“自分にとってつらいこと”、つまり、“自分が欲しくないこと”を認めることも、案外難しいことなのです。

2つ目のステップは、“自分が欲しいものは何かを知ること”です。

1つ目のステップをクリアし、自分のつらさを認めることができたクライエントとは、例えば、次のような感じです。

その人にとってのつらさ、つまり、欲しくないこととは、“母親から愛されなかった”という幼い頃の記憶でした。愛されない自分には、存在する価値がないように感じられました。

そこで、セラピストと一緒に取り組むのは、当時の自分が“欲しかったこと”へと注意を向けることです。

多くのクライエントは優しいので、「母親も当時、父親との仲が悪くて大変でした…」などと母親をかばおうとします。しかし、ここで大切なのは、母親が抱えていた事情ではなく、“幼いクライエントにとって必要だったこと(need)”を、成長したクライエントが、今度こそしっかりとセラピストの前で言葉にすることなのです。

「本当は、母親に自分をみてほしかった。不安なときは抱きしめて、“大丈夫よ”と言ってほしかった」。こんなふうに語るとき、多くのクライエントは涙を流します。その表情はまるで、子どもの頃に我慢した涙を、ようやく流せることができるようになったかのように幼く純粋なものです。

3つ目のステップは、“自分が欲しいものがどんな感じがするかという実感を身につけること”です。

書いていると忘れそうになってしまいますが、これは、引き寄せの法則のごく基本的なステップとして書かれていることに沿っています。

感情の役割と機能に焦点を当てた心理療法でも、この“実感する”という段階が非常に重要です。この段階がないと、単なる知的洞察に留まってしまい、人格の変容にはつながらない場合が多いのです。

例を挙げると、クライエントには、もしも“自分がして欲しかったこと”が与えられていたなら、どんな気持ちやどんな身体の感覚が湧き起こるかということに、注意を向けてもらいます。ここでは、クライエントの想像する力と、治療関係が鍵になります。“して欲しかったこと”を与えてくれる対象は、必ずしも母親でなくてもかまいません。

世の中には悲しいことに、子どもが与えて欲しいことを、与えられない母親もいます。

そのような場合は、母親に固執せず、学校の先生や親戚の伯母さんや、セラピスト、現在のパートナー、もしくは特定の誰かではなくあたたかさを感じさせてくれる存在、それは、近所の公園の木の下、木漏れ日が降り注ぐ茂みの上、海岸線まで見渡せる海など、自然を対象としてもかまいません。

多くの力あるクライエントたちは、大人になった自分から、幼かった自分へ与えることもできます。“愛されなかった”と感じているはずの人が、かつての自分へ“愛を与える”のです。

“欲しかったもの”が自分に降り注がれたとしたら、どんな感じがするか、時間を十分に取って、じっくりと感じてもらいます。あたたかい涙があふれる時間です。

ここまで来たらもうずいぶん、心理療法の中で達成される“変容”は起こっています。

4つ目のステップは、“この物質界で願いが実現すること”です。

ここはもしかすると、引き寄せの法則と心理療法の分岐点かもしれません。

しかし、“なりたかった自分になれる”、あるいは、“本当の自分になれた”と感じられたクライエントにとっては、“願いが実現した”ということもできるでしょう。

心理療法のステップとしてこの段階で行われることは、“クライエントが変化を体験し、達成した変化をセラピストと共有すること”です。

今ここにいる自分が、どんなにかつてと違っているか。

それを言葉にしたり、誰かと分かち合ったりすることは、その変化をより確かなものにします。クライエントにとっても、セラピストにとっても、とても満ち足りた段階です。

自分が欲しくないもの、本当に欲しいもの。

それを見分けるのは、感情の力です。

周囲の状況や、かかわる相手の様子に気を配ることで忙しい日々ばかりでは、自分の感情が何を訴えてきているのか、聞き届けることが難しくなってしまいます。

自分の心にも気を配り、耳を傾けること。

引き寄せの法則は、“自分に還る”ことで“自分を変える”ことができると、教えてくれているような気がします。