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emotion laboratory

感情は人生の羅針盤

犬にも大切な感情調整

感情をめぐっては、人間だけではなく動物にも、とても興味深い話がたくさんあります。それも感情の魅力のひとつかもしれません。

こちらの本では、さまざまな動物の感情の世界が生き生きと描き出されています。邦訳もとてもわかりやすく、訳者の方が著者の動物たちへ向ける優しいまなざしまで含めて、翻訳されているようです。

動物が幸せを感じるとき―新しい動物行動学でわかるアニマル・マインド

動物が幸せを感じるとき―新しい動物行動学でわかるアニマル・マインド

 

今回は、犬の感情調整に関する話題を取り上げます。

犬の祖先はオオカミ。これは、よく知られた事実でしょう。しかし、オオカミと犬がどんなふうに違うのか、まで知っている人は少ないでしょうし、誤解していることもたくさんあります。

私も、この本を読んで、オオカミのほうが犬よりも、社会を形成する力があり、集団生活を送るための知恵を身につけていることを知りました。よく“一匹狼”などと言いますが、それは親元を離れてパートナーを探す若いオオカミに限られるそうです。

社会性が発達しているオオカミたちの世界では、相手に対して服従行動をとるべき立場か、優位性を示すべき立場かというルールに関する個体間の共通認識があり、それによって秩序が保たれ、無用な争いは回避されます。

一方、犬では、種類によっては服従行動がまったくみられない犬もいて、個々の欲求がぶつかり合う場合は、それぞれの個体が適切な感情調整の方法を学んでいないと、争いが起こってしまいます。

感情調整の機能が、秩序を守るルールとして共有されているオオカミの社会。

服従行動にかかわるルールがないため、それぞれの個体が持つ感情調整の能力が重要性を増す犬の社会。(犬種にもよりますが)

感情調整には社会のシステムに組み込まれているものと、個体の能力に依存するものとがあるというのは、人間社会にも言えそうな気がします。

この本では、さらに、犬の行動がさまざまな感情に基づいていること、そして、犬も感情を調整する方法を身につけていく必要があることについて書かれています。

アンガーコントロールの一つに、怒りを感じたら、その場から離れてクールダウンするという方法がありますが、なんと犬にも、自分の怒りを自覚して、争いに発展するのを避けるために、別の個体と一定の距離をとる行動がみられるそうです。

また、感情調整には、怒りを抑えることだけではなく、欲求が満たされないときに我慢する力も含まれます。最近は耳にすることも少なくなったかもしれませんが、“辛抱”や“忍耐”を覚えることは、とても大切な感情調整です。

犬にとっては、幼いうちに他の兄弟との共同生活で母犬のおっぱいを取り合うことや、「待て」と「おあずけ」ができるようになるといった、欲求不満の状態におかれることが、感情調整の方法を学ぶ大切な機会になります。

単なるペットへのしつけということではなく、感情を適切にコントロールし、環境への適応力の高い成犬に育てるためには、犬も人と同様に、欲求が満たされない期間をじっと耐えて待つ 、“辛抱”や“忍耐”を覚える段階が不可欠というのは、興味深いことでした。