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感情は人生の羅針盤

感情を読み解く技術を買う:Apple社の戦略

感情は、人と人だけでなく、人と馬や犬といった動物をも結びつける。

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そんな研究をこれまでもご紹介してきましたが、人の心をつかむヒントが感情に隠れているということに敏感なのは、心理学者たちよりも、むしろIT企業の人たちなのかもしれません。

日本でも、ソフトバンクの店舗だけでなく一般家庭にも、Pepperというロボットが普及するようになり、“感情”というトピックは、ロボット開発者たちにとっても魅力的で追求すべきテーマとなってきています。

製品情報 | Pepper(一般販売モデル) | ロボット | ソフトバンク

すでに、イギリスでは、行動療法のプログラムを搭載したコンピュータ相手で行われるセラピーが始まっており、実際のセラピストを相手に行われるセラピーよりも、ドロップアウト率(セラピーの中断率)が少ないことが知られています。

こちらのサイトでは、心理学者やカウンセラーは、人工知能にとってかわられる可能性の低い職業として紹介されていますが、心理学者やカウンセラーのロボットがヒトの感情を的確に読み取るようになったとしたら、どうでしょうか。

日本の労働人口の49%、人工知能・ロボットで代替可能に 10〜20年後 NRI試算 - ITmedia ビジネスオンライン

そんな中、Apple社が、“感情を読み解く技術”の獲得に乗り出しているという記事が紹介されました。

 fortune.com

Apple社が買収したEmotientという企業は、感情を読み取る人工知能の技術を持ち、すでに広告会社や医師らによって、その技術が活用された実績も持っています。

また、Emotientが持つのは表情からの感情分析の技術ですが、Apple社は、VocalIQという会社も買収しており、こちらは音声から感情分析を行う技術を持っています。

感情は、表情や声の調子、体温・発汗などさまざまなモダリティの総合であり、私たちはその総合的な情報から、他者の感情を同定します。

複数のモダリティに関連する技術を獲得していることから、Apple社が感情分析の精度の高さを求めていることが伺えます。

この記事では、シリコンバレーにおいては、人工知能に感情を読み解かせたり、感情を学習させたりする技術は、今、最も注目を集めるものとなっており、多くの企業がこぞって人工知能の技術開発や獲得に乗り出していると書かれています。

心理学者やカウンセラーにとって、こうした技術開発は脅威となるかもしれない可能性を最初に指摘しましたが、例えば、対人恐怖症の人が治療を受けやすくなるといったメリットも、人工知能によるセラピーには期待できるかもしれません。

しかし、一方でmicrosoft社の人工知能が、人種差別的な発言を学習してしまうといった事態も起こっています。人工知能がヒトに近づけば近づくほど、感情を統制する知性や理性もまた、求められるようになるのではないでしょうか。

人でさえうまく扱うのが難しい感情を、技術に委ねることになるとしたら、カウンセラーや心理療法家に倫理を守る意識が大切であるように、科学技術における倫理の構築も不可欠であると思われます。