先日の記事では、想定されうるリスクを回避するために役立つという不安を感じることのメリットについて触れましたが、今回ご紹介する記事も、「不安は、あなたにとって良くない感情でしかないのでしょうか?」という問いかけから始まります。
下記のリンクの写真はちょっと気持ち悪いですが(笑)、内容を詳しく見ていきたいと思います。
(気持ち悪い…で思い出しましたが、嫌悪に関する興味深いTEDのプレゼンテーションがありました。近々ご紹介できればと思います。嫌悪も、近年の感情研究において注目を集めている感情のひとつです。)
不安を感じるとき、私たちが体験するのは、決して“よい感覚”ではありません。
胸騒ぎがする、胸がざわざわする、落ち着かない心地などと表現されるように、不安を感じると、交感神経が優位になるため、身体は緊張し、目は冴えて、起こりうる事態に備えよという警報が鳴り続けているような状態になります。
こういう状況にあるとき、私たちは「ストレスを感じている」と思いますし、眉間にしわを寄せながら、そう口にするでしょう。
「早くこんな状況から解放されたい!」そんな気持ちかもしれません。
しかし、一部の人の声に耳を傾けてみると、不安に関するまったく異なったストーリーが展開します。
一部の人とは、救急救命士やライブ・パフォーマー、そして外科医、一流アスリートといった極限の状況で最高のパフォーマンスを要求される人たちです。
彼らにとって不安は、敵と言うよりも友のような存在です。
なぜなら、不安の力を適切に使うことによって、彼らは自分たちのパフォーマンスを向上させているからです。彼らの手にかかれば、不安は最高のパフォーマンスを生み出す要素のひとつになるのです。
これはまだ、メンタルヘルスの専門家ですら認識し始めたばかりのことなのですが、どうやらストレスは、挑戦のストレス(“challenge” stress)と脅威のストレス(“threat” stress)に分けることができるようなのです。
前者は、ストレスを“自分の努力ややり方次第で、それに挑み達成しうるもの”とみなすことによって、不安を成功への燃料として使う場合を指します。記事では、情熱的な芝居をする役者や、記録更新を狙うアスリートの例が挙げられています。
一方、後者は、ストレスに対して自分は無力で為す術がないと感じると、不安は脅威に変わるということを指しています。
研究者は次のように述べています。
「不安そのものは、有用でも有害でもありません。大切なことは、その体験の仕方を学ぶことです。あなたの不安への反応が、不安を有用にも有害にもするのです」
言うほど簡単なことではありませんが、こうした知識を持っておくことは、役に立つかもしれません。
先日、うつ病に関する記事でも書きましたが、やはり、自己効力感(自分がそれに対して何かできる、それに何らかの影響を与えうるという感覚)は、感情に圧倒されてしまわないための大切なポイントであることが、この記事からも示唆されていて、何となくうれしくなりました。