Talk to Your Heart

〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

脳にとって、失恋は骨折と同じ。

心の痛みと身体の痛みは、脳内の同じ場所で情報として処理されている。

とても興味深い研究です。

healthland.time.com

この記事で紹介されている研究者たちは、身体の痛みは、感覚的な要素と感情的な要素の2つから成ると考えています。そして、後者は、いわゆる「心の痛み」を感じるのと同じ脳内の場所で処理されていることを明らかにしました。

心の痛みを感じる場所は、日本語では、前帯状皮質の背側前帯状皮質(dACC)と前島(anterior insula)のことです。前島は近年、PTSDや感情に関する研究において、注目を集めている脳の部分です。

もっと詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。

帯状皮質運動野 - 脳科学辞典

さらに、失恋したばかりの被験者を集めたある研究では、パートナーから拒絶されたことによる強い心の痛みが、通常は身体の痛みしか処理されないはずの脳の部位を活性化させることも明らかになっています。

つまり、心の痛みとは、単なる比喩ではなく、本質的な「体験」なのです。

身体的な刺激と精神的な刺激は、相互に影響を与え合います。

拒絶による疎外感や孤独感は身体にも痛みをもたらす一方で、手を握ってもらったり抱きしめてもらったりすると、心の痛みが和らぐということでもあるのです。

「痛いの痛いの飛んでいけ」と子どもの頃に言われて、なんとなく痛みが和らいだような気がしたのは、このためだったのかもしれませんね。

一方で、この研究を行った同じ研究者らによって、鎮痛剤に心の痛みを和らげる効果があることも明らかにされました。

これは、薬理学上では興味深い発見かも知れません。

しかし、人間のウェルビーイングを考えると、できれば薬ではなく、他者とのつながりや触れ合いによって、痛みを和らげることができればと思います。

手当てという言葉は、最近では耳にすることも少なくなったかもしれませんが、人の手ほど優しく、あたたかいものは、なかなかないような気がします。

孤独な人の背中に、痛む自分の胸に、そっと手を当ててみてください。

身体は、必ずその信号を脳に伝え、痛みを和らげてくれるはずです。