結論から言うと、災害による影響よりも、成長し社会性が発達することが、共感能力の発達と関連していることが、この研究からは明らかになっています。
対象となったのは、中国で大きな地震を体験した6歳と9歳の子どもたちです。
震災後、6歳の子どもたちには、震災を経験する前よりも退行して、自己中心的になる傾向がみられる一方、9歳の子どもたちは、より利他的な行動をとり、他者への思いやりを示すようになったそうです。
しかし、3年も経つと、利他的な行動は震災経験前と同じ水準に戻りました。
これは、「大変な状況では他者と助け合う」という気持ちが、9歳ごろには見られるようになることを示しています。
また、6歳の子どもが示す退行も、心の健康にとって大きな意味があります。
圧倒されるような大きな体験を理解したり受け止めたりする能力がまだ乏しいため、退行という文字が示す通り、より安全な状態へ退却する必要があるのです。
しかし、この記事から励まされるのは、震災が人の心のすべてを変えてしまうというわけではないということです。
ピアジェという心理学者が、子どもが成長の過程において、自己中心的な思考から脱することを「脱中心化」と呼びましたが、これが起こる時期は、だいたい7歳~11歳頃と言われています。
つまり、6歳の子どもには退行が起こり、9歳の子どもには他者を思いやる行動が生じるというのは、子どもの発達段階のごく自然なプロセスであり、それは圧倒的な災害によっても、ヒトという種が保持する発達のペースなのです。