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〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

感情擁護派の視点から その④ つながりの橋を架け直す

感情的になると、人との関係が壊れてしまう。

感情が忌み嫌われる要因の一つに、こんな懸念や心配があります。

特に、アジア圏の文化においては、個人は西洋ほど独立した存在ではなく、人との関係の中に自己を見出す傾向が強いため、人との関係やつながりが切れてしまうことは、自分自身の存在を脅かす危険な状態として感じられやすいのです。

楽しそうな人には近づきやすいですが、悲しんでいる人や、怒っている人に対しては「そっとしておこう」と及び腰になってしまうことも多いでしょう。

また、家族や友人、恋人といった親密な関係においては、その親密さ故に「わかってほしい」という期待や甘えが強まり(これは決して悪いことではなく、ごくごく自然なことです)、例えば職場の同僚にはぶつけないような気持ちもぶつけてしまうことがあります。

しかし、ここで大切なのは、人に感情をぶつけないようにすることというより、むしろ、ぶつけてしまった後にどうするか、ということです。

Kaufmanという心理学者は、人と人との心のつながりや愛着のある関係を、interpersonal bridge という心理的な架け橋と表現しています。

そして、この橋はたびたび壊れてしまうけれど、壊さないようにすることよりも、壊れた後にそれを修復しようと試みることのほうが、より大切であると述べています。

例えば、子育ての中では、子どもを叱らないでいることなどできません。

忙しいときほど、子どもが言うことを聞いてくれなくて、ついつい感情的に声を張り上げてしまうことは日常茶飯事でしょう。

Kaufman は、子どもを叱った後に、子どもを抱き上げたり、頭をなでたりするスキンシップをはかりながら、「あのときいけなかったのは、あなたの行為であって、あなたのことが嫌いなんじゃないんだよ」というメッセージが子どもに伝わることが、子どもの自尊心を育むために重要であるとしています。

抱き上げたり、頭をなでたりするのを嫌がる年齢の子どもには、スキンシップではなく、ただそばにいる、同じ空間にいる、ということが有効な場合もあるでしょう。

つながりを壊さない努力よりも、壊れた後に修復しようと努力することが大事。

そんなふうに思えると、自分の感情にも、他の誰かの感情にももう少し寛容になることができるかもしれません。

感情は人との関係を壊してしまうだけではなく、人と人とをつなぐものでもあるのです。

The Psychology of Shame: Theory and Treatment of Shame-Based Syndromes

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