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〜自由が丘カウンセリングオフィスのblog〜

見て見ぬふりをされる恥

前回、恥と自意識について書きました。

この恥の意識、日本人はかなり特有なものを持っているように思います。 

見るなの禁止 北山修著作集1 日本語臨床の深層

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 外国人から見ると、単なる自己主張や感情表明であっても、日本人は「熱くなってみっともない」「人前であんなに泣くなんてかっこ悪い」と言われてしまいます。

感情を出さない、冷静、気丈であることが美徳とされがちです。

しかし、感情には、その感情に特有の「行動傾向(action tendency)と呼ばれるものがあります。

恥の行動傾向は、よく「穴があったら入りたい」と言われる通り、隠れることです。

恥ずかしがって母親の後ろに隠れる子どもの姿はかわいらしいものです。

とても自然な感情に対する反応なのです。

しかし、大人になるにつれ、恥に対する恥がわき起こってくるようになり、子どものように自然な感情反応が取れなくなります。

恥を感じると、その恥に対する恥が起こって、恥をかかされたと怒ったり、あえて無表情・無反応を装ったり、曖昧に笑ってごまかしたりするようになるのです。

ここでも、やはり恥を感じている自分を「隠す」目的で、怒りや無表情や笑いが用いられています。

特に、笑いや無反応は、日本人に多く見られます。

取り繕う、なかったことにする、という反応です。

こうした曖昧さ、不問に付すことも、日本の文化と呼べるものかもしれません。

ですが、その弊害もあるような気がします。

ごまかし、曖昧にし、何事もなかったかのように振る舞うと、見えなくなってしまうものがあります。置き去りになってしまうものがあります。

それは、もしかしたら、誇りや自信の芽のような、とても大切なものかもしれません。

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)

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