人間の適応や心理的健康、ウェルビーイングにかかわる、感情の機能と役割を重視する心理療法を学んでいると、痛みのコンパス、という言葉に出会うことがあります。
大切なことは、痛みの奥に隠れている。
痛みが、変容への指針である。
という意味です。
感情に焦点を当てた立場をとる心理療法(エモーション・フォーカスト・セラピー、再決断療法など)のカウンセリングでは、クライエントにとって、心理的な痛みを伴う体験がある場面に戻って、過去にしたこととは違う形で、感情を体験したり、表したりすることを目指します。
それは、修正感情体験となって、変化への追い風となります。
長年の習慣で、骨がゆがんだり、肩が張ったりというふうに、身体の姿勢ができあがるように、感情の感じ方や経験の捉え方にも、その人に固有のパターンができてきます。
そのパターンは、やっぱり時折見直す必要がありますし、パターンの偏りが顕著になると、調子を崩したり、壁にぶつかったりするのが、自然の流れだと思います。
人生とはよくできていて、結婚や出産、昇進や転職、退職や身近な人の死など、さまざまな課題によって、私たちはそのパターンを試され、点検することを促されます。
マッサージや整体に行って、身体の歪みを整えるのと同じように、カウンセリングも心の歪みを整えるという感覚で、もっと気軽に利用できるものになるといいのにと思います。
カウンセリングは、心が弱い人が受けるもの、という偏見がまだまだ根強いですが、私は反対だと思います。
カウンセリングを受ける人は強い人です。
自分の心と向き合う作業はたいへんです。何しろ、痛いところへ入っていくのですから。
迷うこと、悩むこと、つらいと思っていることが問題なのではなく、そんな自分を「心が弱い」と責めることこそ問題だというケースも多いように思います。
十分に迷い、悩み、感情を感じる場を提供すること、それがカウンセリングの一番基本となるあり方なのでしょう。(もちろん、そういう場として機能し始めるまでの道のり、というのもあります)
悩むこと、カウンセリング、ということで今日はこの2冊。